2016年2月12日更新

【自称工作師がつくる「ATM明細用2穴パンチ」】

人の困っているところにはニーズがある。依頼にこたえた結果、世に存在しない文具ができてしまった、というお話。

自称工作師

文具工作部隊「SKIP」隊長、日本茶色普及協会理事長、茶色好き(通称:チャイラー)。
「ないものは自分で作る」「作り方は自分で考える」をモットーに、不定期で「工作会議」を開催しワークショップを行っています。

View
4,014
クリップ
0

はじめに

 

文具朝活でお世話になっている中江さんから相談を受ける。

「ATMから出てくる明細のための、2穴パンチを作ってほしい」

ATMから出てくる取引明細、かつては2穴があいていたそうだが、最近は穴があいていない明細書が出てくるATMが多いとのこと。
専用のファイルに綴じているため、穴をあけるために百均の「ハンディー1穴パンチ」を利用しているが、穴径が大きすぎるらしい。

1穴パンチ

 

「人が困っているところにはニーズがある」

ある方からいただいた名言である。

「ある方」とは誰なのか。
本人が図に乗って「上から目線」になるかもしれないため、あえて「つばめや」の誰であるかは明かさないことにする。

文具メーカーが市場に製品を投入する場合、一定以上のニーズが存在しないと商売が成立しない。
そして、大量生産はコストを下げる手段としては有効であるが、消費者の多彩なニーズを満たすことはできない。

その点、工作はちがう。
私の工作は商売ではなく「道楽」である。
たとえニッチなニーズであっても、道楽ならば手間暇かけてそれを満たすことができる。
人助けになるのなら、私は可能な限り「工作」というソリューションで問題解決を図りたい。

というわけで、今回はたったひとりの要望に応えるために、ATM明細用2穴パンチを作ってみる。

 

 


工作のポイント

 

工作に先立って、クライアントの中江さんから、「現金自動預金支払機ATM専用通帳」をお借りした。

ATM明細通帳1

 

発行元は巣鴨信用金庫という「おばあちゃんの原宿」にある信用金庫である。
ちなみにクライアントの中江さんは「おばあちゃん」ではなく、自称「永遠の17歳」である。

ATM明細用通帳

 

ATM専用通帳を調べてみる。
ATM明細のピッチ(2穴の間)は70mm、穴の直径は約3mmである。
一般の2穴パンチよりもピッチが狭く、そして穴が小さい。

方式を考えてみる。
私の工作は「誰でもできる」「可能な限り低コスト」を目指しているため、これにしたがった方式でなければならない。

ホチキスを2連にする方式、伝票差し方式などを考えてみたが、手間とコストと実用性のバランスが取れない。
考えた末、蝶番(ちょうつがい)を使って、リヒトラブの「ツイストリング用パンチ」のような単純な構造を再現するのが一番合理的であると判断した。

 

 


今回使った材料

 

1)PP素材の蝶番(ちょうつがい)

 ホームセンターコーナンで発見。
 加工のしやすさを考えて、PP素材(ポリプロピレン)のものを選択。
 2個セットで、それぞれに穴がふたつあいており穴径は3mm。

PP素材蝶番

 

2)ネジ

 同じくホームセンターコーナンで入手。
 径3mm、長さ10mmのネジ2本。

ネジ

 

3)アイスの棒(ハズレ)

 これも2本必要。
 夜中に息子のアイスを盗み食いし、洗剤で洗って一晩乾燥させる。

アイスの棒

 

4)瞬間接着剤

 百均で購入。

瞬間接着剤

 

 

今回使った道具

 

1)大きめのハサミ

 アイスの棒を切断するのに使う。
 ノコギリが望ましいが、後始末を考えて大きめのはさみで代用。

ハサミ

 

2)ドライバーセット

 アイスの棒に穴をあけるのに使う。
 今回は「千枚通し」と「プラスドライバー」を利用。

ドライバーセット

 

3)ボールペン

 アイスの棒に寸法を入れるのに使う。

ボールペン

 

4)定規

 アイスの棒に寸法を入れるのに使う。

定規

 

 


作り方

 

1)寸法入れ

 ボールペンと定規を使って、図のように寸法を入れる。
 まず中心線と中心点を記入し、中心点から左右35mmの位置に点を記入する。
 蝶番の穴から端までの距離でアイスの棒を切り落とすので、左右の穴から7mmの位置に切り取り線を引く。

寸法入れ

 


2)棒の切断

 大きめのハサミを使って、アイスの棒を切断する。
 左右の切り取り線に沿って、思い切って切り落とす。
 破片が飛んでいくので、人ごみの中でやらないように注意すること。

アイスの棒切断

 

3)蝶番の接着

 瞬間接着剤を使って、蝶番の外側からアイスの棒を接着する。
 アイスの棒に記入した点と、外側の穴の中心の位置を合わせるようにする。

蝶番の接着1

 蝶番の上下×2、4箇所接着し、3分ほど放置して乾燥を待つ。
 アイスの棒が反っていると、まっすぐに接着できない。
 この場合、辞書などの重いもので圧力をかければよい。

蝶番の接着2

蝶番の接着3

 

4)棒の穴あけ

 ドライバーセットを駆使して、アイスの棒に穴をあける。
 上下の片側面、外側の2箇所に穴をあける。
 「千枚通し」できっかけを作り、「プラスドライバー」で徐々に穴を広げていく。

穴あけ1

 力を入れすぎるとアイスの棒が縦に裂けてしまうので注意。
 私も裂けてしまったのだが、瞬間接着剤で冷静に補修する。

穴あけ2

穴あけ3

 

5)ネジの取り付け

 穴にネジを差し込んで蝶番を綴じ、下の蝶番の穴にネジがヒットするかどうか事前に確かめる。
 ネジが穴に入るように調整したら、写真のように瞬間接着剤で接着する。
 穴が埋まるくらい、たっぷりと接着剤をつけてからネジを差し込む。

ネジ1

 3分放置して乾燥を待つ。

ネジ2

 

完成。

完成

 

 

使ってみる

 

メモ帳をセットして蝶番を綴じる。
力を入れると「パチン」という音とともに、3mmの穴があく。

使ってみる1

使ってみる2

 

市販の2穴パンチと違って、穴をあけたあとの「丸いカケラ」は下に落ちない。
手作り品らしく、カケラは手で取り除いてやる。

使ってみる3

 

ATM専用通帳に差してみる。
おお、ちゃんとファイリングできる。

使ってみる5

 

 


まとめ

 

わたしレシピ。

わたしレシピ

 

。。。
今回「一応、使えるもの」はできた。
使ってみて気づいた改善点が、いくつかある。

まず、紙をセットする位置。
どこに紙を合わせればよいかわからないため、印をつける必要がある。
しかし現物が手元にないため、クライアントへの手渡し時に位置を確認し、アイスの棒に印をつけることにする。

つぎに、穴の精度。
市販品のパンチの凹凸は、内側がくぼんで外側が鋭利になっているため、キレイに穴があく。
今回はネジを使ったため、キレイな穴があかない。
また、穴をあけたあとに丸いカケラが残ってしまい、これを手で取り除いてやる必要があるのも改善すべき点である。

 

。。。
何気なく使っている市販製品。
我々消費者は、その製品のもつ機能をあたりまえのように享受しているわけだが、その細部は数々の工夫で満ちている。
自分で作ってみて、初めてそれがわかるのだ。
モノづくりを生業としている方々に対して、私は尊敬の念を抱いてやまない。

 

。。。
私は素人の自称工作師。
決してモノ作りのプロではないが、「道楽」を突き詰めてプロの技に近づきたい。
そして、これからもニッチな要望もつ「困っている人」を助けていきたい。

 

。。。
おっと、クライアントから連絡が入った。

なになに?
この道具のネーミングが決まったとのこと。

その名前は。。。

「明細に穴あけ『ちゃお』!」

 

あーあ、せっかくクライアントが誰だか、ぼやかしてあげてたのに。。。

( ̄▽ ̄)T

 

 

 

 

 


<免責事項>
工作で事故が起きても、当方では責任を負えません。
あくまで自己責任で行ってください。

 

 

 

 

 

 

 

コメント

コメントを入力するためにはログインが必要になります。
まだ登録していないかたは無料会員登録をしてください

ログイン 無料会員登録

読み込み中です・・・
コメントはまだありません

こんなコラムも書いています

【自称工作師がつくる「ATM明細用2穴パンチ」】

自称工作師が出版する「文房具改造マニュアル」

このたび縁あって書籍を出版することになりました、というお話

【自称工作師がつくる「ATM明細用2穴パンチ」】

【自称工作師が薦める「コーヒーで事務効率アップ」】

コーヒーのカフェインが脳を活性化して事務効率が上がりましたよ、というお話。

【自称工作師がつくる「ATM明細用2穴パンチ」】

【自称工作師がもらう「茶色いインク」】

アメリカで文房具を普及するビジネスを始めたブルースさんからいただいた茶色インク、というお話。

【自称工作師がつくる「ATM明細用2穴パンチ」】

【自称工作師がもらう「焼酎のガラスペン」】

懸賞王からいただいた焼酎のガラスペンを試してみました、というお話。

【自称工作師がつくる「ATM明細用2穴パンチ」】

【自称工作師が貫いた「色に対する一途な愛」】

愛が満ちあふれる世界に生きつつ、一途な愛を貫いた45歳工作男子の物語、というお話。

関連するコラム

【自称工作師がつくる「ATM明細用2穴パンチ」】

新しい年に初挑戦企画。

Dr.Gripは、発売から25年以上の歴史を誇る人気商品です。 今回、カスタマイズできるシャープペンシルをデコって、 『世界に一つだけのペン』にし...

【自称工作師がつくる「ATM明細用2穴パンチ」】

ワタシのワタシメイド手帳

私なりのワタシメイド手帳の作り方をご紹介します。4月始まりの手帳を作る予定の方の参考になれば。

【自称工作師がつくる「ATM明細用2穴パンチ」】

【小学生と文具交換した】一生懸命説明してくれるのがかわいい。(・∀・)

地元で小学校のブラバンの指導を手伝っているのですが、先日クリスマス会ということで、300円縛りのプレゼント交換をしました。 わたくしには、...

aboutブングスキー

おすすめのコラム

いまbungusukiで注目のコラム

アクセスランキング

人気のあったコラムランキング

話題のキーワード

いまbungusukiで話題になっているキーワード

» キーワード一覧

bungusuki [ブングスキー]|文具好きのためのコラムメディア